保存温度帯変更とは?|食品の賞味期限と冷凍の秘密
作成日:2023年3月10日
最終更新日:2024年07月18日
目次
保存温度帯変更とは?
保存温度帯変更とは、食品の保存における温度帯を変更することを指します。これは、食品を販売・流通する際に、冷凍から冷蔵などの温度帯に変更する作業を含みます。この変更に伴い、シール(ラベル)に表示する賞味期限や消費期限を適切に調整する必要があります。
保存温度帯変更のシール表示例
保存温度帯変更の例として、たとえばある食品は製造時に冷凍保存(通常-18℃以下)され、賞味期限が冷凍条件に基づいて設定されています。しかし、スーパーマーケットなどでこの食品を販売する際、消費者に提供するためには冷蔵条件(通常10℃以下)で保管・販売する必要があります。
この場合、保存温度帯のシール表示を冷凍から冷蔵に変更しなければなりません。この温度帯の変更を「保存温度帯変更」と呼びます。
賞味期限の変更もルール
保存温度帯が変更されると、賞味期限も変更される必要があります。たとえば、冷凍条件での賞味期限が半年の場合、冷蔵条件で同じ賞味期限を設定することはできません。新しい保存条件に基づいて、賞味期限を適切に再設定する必要があります。この変更には科学的な根拠が必要で、食品の品質や安全性を保つための重要なステップです。
保存温度帯変更者とは?
保存温度帯変更者は、食品の保存温度帯を変更した業者のことを指します。冷凍から冷蔵に変更する場合、これを行った業者が保存温度帯変更者となります。なぜ保存温度帯変更者の名前が重要なのでしょうか?
保存温度帯変更者の名前をシールへ明確に記載することは、食中毒などの問題が発生した場合、責任を特定するために重要です。食品を冷凍から解凍して販売した場合、解凍から賞味期限までの間、保存温度帯変更者が責任を負います。ただし、異物混入や製造・流通に起因する品質劣化は別の要因です。
保存温度帯変更者に求められること
保存温度帯変更時、以前の賞味期限を誤解されないようにするために、新しい賞味期限を明示する必要があります。特に業務用の大容量商品を消費者向けに小分けにパッケージする場合、各パッケージに正確な賞味期限を記載する必要があります。冷凍で販売されていた商品を冷蔵で販売する際、元々の賞味期限は見えなくなるように新しい賞味期限を表示します。この新しい賞味期限の付け方には科学的・合理的な根拠が必要です。
消費者の健康と原因の究明
保存温度帯変更や保存温度帯変更者の表示は、消費者の健康と食品の品質を保護するために非常に重要です。食中毒が発生した場合、業者、流通業者、製造業者など、関連業者からの問い合わせが一般的です。食品に起因する食中毒の原因を究明するため、保存温度の変更や変更者の表示は欠かせません。このような情報を提供することで、問題が発生した場合、迅速な対応と調査が行われ、消費者の健康と食品の安全性を確保するのです。
立場の弱い者への責任転嫁に注意
食中毒などの問題が発生した場合、しばしばメーカーからクレームが届きます。一般的に、製造業者は商品の販売側であるため、立場が弱いことがあります。そのため、最終販売者は問題を製造業者に転嫁する傾向があります。しかし、最も重要なのは消費者の健康と問題の究明です。責任を転嫁せず、誠実に調査し、消費者の安全を最優先にすることが大切です。このためにも保存温度帯変更者の情報は重要なのです。
保存温度帯変更が関係する食品・業界
1. フローズンチルド食品:
保存温度帯変更は、冷凍状態から冷蔵状態への変更を実現するのに一般的に使用されます。凍結した食品を解凍し、消費者により新鮮な食品を提供します。ケーキ、プリン、魚の加工品、野菜、果物、ピザなど、フローズンチルド食品のカテゴリーで頻繁に利用されています。
2. 鮮魚と冷凍食材:
特に鮮魚の流通において、鮮度の保持が不可欠です。冷凍された魚介類を解凍して、チルド状態で販売するために保存温度帯変更が実施されます。この方法により、新鮮な刺身や魚介類を提供できます。
3. 加工食品:
多くの加工食品、特に肉や魚の加工品、惣菜、冷凍ピザなど、冷凍から冷蔵状態への変更が行われます。これにより、消費者に新鮮な食品が提供され、流通効率が向上します。
4. 食品卸売業:
食品の卸売業者は、仕入れた冷凍食品を解凍し、チルド条件で小売業者に提供するために保存温度帯変更を実行します。これにより、商品の鮮度が保たれ、需要に応じた流通が可能になります。
5. レストラン業界:
多くのレストランや外食産業でも、冷凍材料を解凍し、料理を提供する際に保存温度帯変更を採用しています。これにより、新鮮でおいしい料理が提供できます。
消費者庁による罰則はありますか?
消費者庁 「加工食品の表示に関する共通Q&A」 より一部抜粋
流通段階で適切に保存方法を変更したものであって、消費期限又は賞味期限の表示の変更が必要となる場合は、適正な表示を確保する観点から、変更された保存方法及びこれに基づく新たな期限を改めて設定し、適切に表示し直さなければなりません。
食品等の製造業者等が責任を持って温度管理を実施すること等により、食品等の衛生上 の危害を防止することが望まれます。 なお、これらの期限の再設定は、科学的・合理的根拠をもって適正かつ客観的に行わ れた場合には、法令違反となるものではありません。
保存方法(温度帯)を変更することから、賞味期限や消費期限の再設定が必要となります。
製造者や流通業者には消費者への表示義務が発生します。責任をもって取り扱わなくてはなりません。正しく行わないと消費者の健康被害や食品衛生法違反となる可能性があります。
OSPでは表示ラベル作成のお手伝いをさせて頂きます。保存温度帯変更に伴うラベルの変更でお困りの方や、さらに詳しい対応を知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。
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この記事の筆者
中嶋
OSP TOP NEWS 編集担当。
OSPの製品やサービスの情報から、包装や食品表示に関する法改正やトレンド情報まで、多岐にわたるジャンルの記事を20年以上にわたり執筆。
食品包装の豊富な知識を活かして、最近では製造メーカーの組合や、包材メーカーが主催の、衛生説明会に招かれて講師などを務める。
趣味はソルトルアーフィッシング。