パッケージの工夫で食品ロスは減らせる!?
近年、社会問題になっている食品ロス。パッケージ制作の観点から食品ロス削減に貢献することはできるのか? 食品の劣化・損傷を防止する包装技術や、容器の形状と中身の相性が食品ロスの発生におよぼす影響などについて研究する、日本女子大学の北澤准教授に話を聞きました。
日本の食品ロスの現状
食品ロスとは、本来食べられるのに廃棄される食品のこと。令和4(2022)年度推計によると、日本の食品ロス量は年間472万トンにもおよびます。発生状況の内訳を見ると、最も大きな割合を占めるのは食品製造業の117万トンです。
しかも、例えば衝撃により砕けて袋の隅に溜まったクッキーの粉、コンビニおにぎりを開封する際にフィルムの端に残った海苔といった細かいロスや、農産物の減耗量(収穫されたものの出荷されずに廃棄された量)はこの数値に含まれていません。こうした「隠れた食品ロス」も考えると、実際のロスはもっと多いと言えるのです。
このような現状に対して、企業にはさまざまな対策が求められています。その中の一つとして注目したいのがパッケージ。流通・消費の過程において発生する食品ロスは、パッケージを工夫することで削減できる可能性が大いにあるのです。

パッケージの3つの機能と食品ロスの関係
食品パッケージには、中身を守る「保護性」、使う人に便利さを与える「利便性」、使う人に情報を伝える「情報伝達」という3つの機能があります。
これらをふまえて食品ロス削減のためにパッケージが果たせる役割を考える場合、これまでは一般的に「保護性」のみに着目されがちでした。しかし近年、「利便性」や「情報伝達」が果たせる役割についても注目が高まっています。
それぞれどういった考え方で、どういった工夫ができるのか。次ページから具体的に解説します。

①保護性
消費前の廃棄につながる、さまざまなダメージから食品を守る
食品の中には、流通・消費の過程で傷んだり潰れたりした結果、食べられずに捨てられてしまうものも多くあります。こういった食品ロスを減らすには、「物質の変化(品質の劣化)から守る」「損傷から守る」という2つの意味でパッケージの保護性を高めることが有効です。
「物質の変化(品質の劣化)から守る」という点では近年、酸素や水蒸気を遮断して中身の酸化を防止する「ガスバリア性」に優れたパッケージが普及しています。これによって鮮度や風味が保たれるため賞味・消費期限が長く設定でき、結果として食品ロスの削減にもつながるのです。
「損傷から守る」という点では、トマトやイチゴといった青果から、クッキーなどのお菓子まで、輸送時に損傷しやすい食品をどう守るか、生産者やメーカーが試行錯誤。食品が動かないよう固定したり、中に入れる緩衝材を工夫したり、さまざまな包装方法が開発されています。
私の研究室でも、農産物に対して温度・湿度の違いによる品質の劣化を調べる貯蔵実験や、落下する高さの違いによる損傷実験、また、クッキーに対して小さなダメージを何度も加えて壊れる過程を検証する損傷実験など、食品や包装をさまざまに組み替えて最適な包装の研究・設計を行っています。
昨今、SDGsの観点から包装はできるだけ減らすべきものだと言われがちです。しかし、こういった保護性の観点からは、むしろしっかりと包装するほうがロスを減らせる=地球に優しいとも言えます。ぜひ、「過剰包装」ではなく「適正包装」を考え実践していくことで、食品ロス削減を目指しましょう。

②利便性
食べきりやすくすることで、「取り残し」というロスを減らす
食品ロスというと、一般的に食品の「食べ残し」がイメージされがちですが、私の研究室で着目しているのは、食品の「取り残し」です。細かい取り残しも食品ロスの一種であると考え、パッケージの形状と中身の相性が取り残し発生におよぼす影響について研究しています。
例えば、さまざまなソースやドレッシングを集めて、容器の形状と中身の関係から最終的に使いきれず容器内に残ってしまう量を検証。また、ペットボトル入りのミネラルウォーターを何種類も集めて、どの形状だと最後まで水が飲みきりやすい・飲みきりにくいかを比較検討しています。一方、世の中に目を向けてみると、昨今実際にパッケージを改良し、取り残し削減に成功している事例がいくつか見られます。一例を挙げると、最後まで中身が出しやすい練りわさびのチューブ、ヨーグルトが付着しにくいふた、海苔がちぎれずきれいに剥がしやすいコンビニおにぎりのフィルムなど。身近な商品で、こうした変化に気づいている方も多いのではないでしょうか。
さらに、パッケージの改良によって取り残しを減らすことは、食品ロス削減に直結するのはもちろん、容器のリサイクルがしやすくなるという利点もあります。取り残しにくいパッケージの開発を進めることで、食品ロス削減とリサイクル促進という2つの側面で環境負荷低減に貢献できると良いですね。

③情報伝達
表示の工夫、メッセージの伝え方によってロス削減への意識を高める
近年、パッケージの表示を工夫することで、食品ロス削減が促進された事例も多くあります。例えば、お菓子の賞味期限の記載を袋の裏から表に変えたところ、消費者の意識が高まり、期限切れによるロス削減につながっています。
また、農産物などのパッケージで「私が作りました」と生産者が紹介されていると、消費者は安心して買いやすく、売れ残りによるロス削減につながっています。安心という意味では、箱や袋入りでも中身が分かる・見えるようにすることも重要な視点です。
一方、賞味・消費期限が近い食品の値引きもロス削減につながる取り組みであり、値引きシールにも昨今、新たな工夫が見られます。例えば、「安さ」ではなく「エコ」をアピールすることで、派手なデザインではなく柔らかな印象にしたり、「たすけてください」と訴える食べ物のイラストや、「食品ロス削減にご協力ありがとうございます」という一言を添えたり。こうした工夫により、値引き商品購入への前向きな動機付けができますし、「古いものは買いたくない」「値引き商品を買うのは恥ずかしい」といった層にもアプローチでき、意識と行動の改革に一役買っています。
さらに2021年から各省庁とコンビニ各社が中心となり、賞味・消費期限の近いものから購入する「てまえどり」の呼びかけを開始。今や一般化しています。今後も情報伝達の工夫において消費者の行動、考え方の変化を促し、食品ロス削減への動きを加速させていくことが期待されます。





