
デジタル印刷を活用し小ロット多品種「でん六豆」お土産シリーズを発売

業種・サービス | : | 菓子製造・販売 |
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本社所在地 | : | 山形県 |
株式会社でん六 企画開発部 商品企画課主任の秋葉沙野花様に、大阪シーリング印刷株式会社(以下、OSP)とのお取引の経緯と、得られた効果について詳しくうかがいました。小ロット・短納期のデジタル印刷を生かし、山形県の名所をプリントした「山形への旅」シリーズを商品化し、観光客の需要獲得、定番商品の高付加価値化に成功されています。

お客様の課題
- ・観光客向け商品の需要を認識しつつ、開発できていなかった
- ・出荷量が少ない製品でも、パッケージにかかるコストを抑えたい
- ・新商品を本生産する前に、より正確なテスト販売を行いたい

OSPの提案
- ・デジタル印刷を活用した、小ロットかつ多品種展開可能なパッケージ
- ・製版が不要なデジタル印刷による初期コストの抑制
- ・グラビア印刷に近い精度で印刷し、テストマーケティングに活用
デジタル印刷を初採用。小ロット多品種展開で山形土産の商品化を実現

OSPとのお取引が始まった経緯を教えてください。
秋葉様:県内の観光関係者から土産品の企画を依頼され、「新たな商品を作りたい」という機運が社内に芽生えた2017年ごろは、ちょうどデジタル印刷が菓子業界に普及し始めた時期でした。他社が期間限定パッケージなどでデジタル印刷を活用しているのを見聞きしており「パッケージも情報を伝えるツールになるのでは」と考えていたところだったのです。各印刷業社からさまざまなご提案をいただきましたが、OSPさんと一緒に取り組むことになりました。当社では初めてのデジタル印刷となる、土産品のパッケージです。
初めてデジタル印刷でパッケージ製作したお土産商品の概要を教えてください。
秋葉様:完成した「山形への旅」シリーズは「でん六豆」のお土産版で、パッケージに県内の観光名所の写真を印刷しています。2019年の発売時には、同一シリーズで20種類のパッケージという、当社では異例のバリエーションの多さでした。製版コストがかからず小ロットから印刷できる、というデジタル印刷の利点が活かされています。
複数の印刷会社からデジタル印刷の提案があったとのことでしたが、その中からOSPを選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか?
秋葉様:まず、デジタル印刷の利点と観光発信を掛け合わせた企画内容が魅力的でした。比較的低予算で多数のデザイン展開が可能で、山形の見どころを広く伝えるという目的と合致すると感じたのです。
また写真の発色の良さもポイントです。観光地なので、昼と夜の写真があり、明るさもばらついていたのですが、全てきれいに仕上げられています。
加えてフットワークも軽く、新しいものを一緒に作り上げていくという熱意を感じました。例えばデザイン提案時に、出力用紙ではなく実際にフィルムに印刷したサンプルを用意してもらえたことで、安全性をスムーズに確認できました。写真の使用にあたっては、山形県観光物産協会と連携しているのですが、OSPさんには先方への確認・調整など、印刷以外の部分でも協力いただけて心強かったですね。
自社の認知アップにも寄与する商品に。観光客には選ぶ楽しさを提供

デジタル印刷によって、20種類という豊富なバリエーションで発売した「山形の旅」シリーズですが、商品の反応はいかがでしたか?
秋葉様:お客様は、ご自身が訪れた場所のパッケージを選びながら、楽しくお買い物されています。販売店には10袋入りの箱で納入されるのですが、箱ごと購入される方もいらっしゃいます。県内の特産品を取り扱う「ぐっと山形」のでん六商品の中で、トップクラスの人気を誇る商品となっています。従来の商品と同じ中身ではありますが、デザインの工夫がお客様にも響いているのだと実感しています。このシリーズができる前は、土産店にも一般流通品を置いていただくしかありませんでした。新パッケージは「山形といえば、でん六豆」というイメージをより力強いものにしてくれています。
パッケージの一部にはQRコードがあり、読み取ると山形県公式観光サイトにアクセスできます。サイトは多言語対応しているので、関係者からは「海外からのお客様に、山形を深く知ってもらうきっかけになる」と喜ばれています。台湾からの誘客が話題になっていたタイミングだったので、情勢とリンクした取り組みができたことも、各所から評価していただきました。
OSPのデジタル印刷でのパッケージ製作を通じて、商品企画や販売戦略にどのような変化がありましたか?
秋葉様:当社は一般流通品が全国的に知られている一方、土産分野への進出が課題でした。「地域の素晴らしさを広く発信する商品を作りたい」という思いはありながら、パッケージデザインなども振り切れていなかったのです。そんな中、OSPさんの提案から生まれた「山形への旅」は、当社の新しい立ち位置を築いています。
2024年には、印刷する観光地のラインナップの変更にも取り組みました。協会や売り場の担当者から反応を聞き、従来の20種類を10種類に再編したのです。パッケージごとの売れ行きやトレンドも踏まえながら、短いサイクルでデザインを見直していける点も、イニシャルコストを抑えられるデジタル印刷ならでは。お客様には、自分の訪れた観光地の写真があることを喜んでいただいており、「でん六豆」に新しい価値を付加することができました。
シーズン商品やテストマーケティングにも小ロット印刷が役立つ

デジタル印刷が活躍できるシーンは、ほかにもあるのでしょうか?
秋葉様:最近では、テレビ番組とのコラボレーションに活用しました。番組オリジナルのフレーバーを作り、視聴者にプレゼントする企画だったのですが、テレビ局側からオファーを受けてから、完成までに残された期間はわずか2カ月。デザイン制作を含めてこのスケジュールは、グラビア印刷では納期に間に合いませんし、デジタル印刷でもかなりタイトですが、OSPさんと協力して形にすることができました。努力の甲斐あって、放映後は多数の反響をいただき、さらに認知を広げられたと感じています。
期間限定のフレーバーを発売する際にも、デジタル印刷を採用しています。山形は季節ごとに多彩な果物が生産されることでも有名ですが、でん六豆も県内産の果実を用いて「ラ・フランス味」などを製造しています。シーズン商品は一般品ほど流通量が多くないため、製版が不要でイニシャルコストが抑えられるデジタル印刷が役立つのです。

さらに新製品のテスト販売にも有効です。精度の高いテストマーケティングを行う上で、本生産と同等のパッケージは不可欠です。しかしあくまで試験販売なので、コストは抑えたい。その願いを叶えてくれるのがデジタル印刷です。実際に、仮のパッケージを用いて県内のスーパーで販売し、反応がよかった商品は増産に踏み切りました。デジタル印刷を活用することで、自信を持って新製品を届けられるようになったと実感しています。
今後、OSPに期待されることは何でしょうか?
秋葉様:今では「デジタルといえばOSPさん」という認識が社内に定着しています。あらゆる要望に応えてくれる柔軟性に、いつも助けられています。観光地や特産物の発信を行う上で、パッケージの持つインパクトは大きいです。当社は社員の9割以上が山形県内出身ということもあり、地元へ強い思いを持っています。アイデアを生み出し、それを実現する企画力と技術力をお借りしながら、これからも一緒に新しい挑戦に取り組んでいきたいです。

今回の取材にご協力いただいた皆様。
左から櫻井様、秋葉様、大場様。
株式会社でん六について

2024年11月に創業100周年を迎えた菓子メーカー。「豆を究め、喜びを創る」という企業理念のもと、豆菓子を中心に、おつまみやチョコレートなど幅広い製品を扱っている。日本一の生産量・販売量を誇る甘納豆のほか、「でん六豆」「ポリッピー」などのロングセラー商品でも知られる。また地元スポーツチームとのスポンサー契約、山形県内でのピーナッツ産地化プロジェクト、工場見学受け入れなど、地域貢献に取り組んでいる。